温暖な気候のもと、山と海、湖、温泉、里山、そして賑わいの街――すべてがそろう神奈川県には、おいしいものがたくさんあります。全国区で名を馳せるものも数多くありますが、意外に知られていない名品もたくさん。そこで、神奈川新聞社や神奈川県観光協会のネットワークを駆使して、あらためて「おいしいかながわ」を探検することにしました。エリアごとにご紹介していきます。
<秦野編>
県中央部、丹沢山系の麓に広がる秦野。水が豊かな地域として知られ、温暖で霜が降りることも少なく、年間を通して多種多彩な野菜や果物が栽培されています。
かまか商店
鮮度にこだわり、素材の味を引き出す
「秦野は全国名水百選で1位に選ばれたことがあるなど、水のおいしいところでも知られています」と杉山さん。おいしい水を生む土壌は、同時に、おいしい落花生を育む大地でもありました。「土がよく、日照にも恵まれた秦野は落花生との相性がよく『相州落花生』というブランドになりました。当家は、初代の嘉兵衛から『おいしい豆で楽しい生活』をモットーに、様々な加工品を生産しています」。特に、鮮度を意識しながら、素材の味を引き出す独自製法で煎り仕上げた「素煎りそぼく豆」は定番の人気商品です。
創業明治6年の落花生専門店
かまか商店は明治6年創業の老舗店。落花生の加工販売と進物用の品揃えで、長く地元の人に愛されています。小田急線秦野駅から北に向かって進み、国道246号線にぶつかる手前、曽屋水道記念公園(旧曽屋配水場)の向かいにあります。
「神奈川県指定銘菓」「秦野市観光推奨土産品」などに選ばれている商品が多数あるだけでなく、「お好みパック」は全国菓子大博覧会総裁賞も受賞するなど、全国でも知られた落花生専門の加工品販売店。現在お店を引っ張るのは6代目店主の杉山和史さんです。
在庫を増やさずこまめに製造
「落花生の収穫は秋、年に一度です。この落花生を少しづつ製品にして皆様にお届けしています。自然の物を原料とするわけですから、いつも同じ物が出来るわけではありません。天候、気温等によって、火の加減等を調整する事になります。又あまり在庫を持たないように、こまめに製造するようにしています。手間がかかりますが、丁寧に製造し皆様にお届けすることを心掛けています。それが商いの原点だと思うんです」と杉山さん。何事も効率優先で、手間を減らし、利幅を拡大することばかり追求していく世相に、「これでは本当のおいしさを知る人がいなくなってしまう」と危機感を募らせています。
これからは、楽しい体験の提供も
今杉山さんが息子さんと進めているのが、落花生を作る楽しさを体験として知っていただく試みです。「ただ買っていただくだけでは、市場は拡がりません。さまざまなアイデアが必要になっています。秦野の名物の一つである桜にちなんで、桜の塩漬けを使った『さくら豆』や、新茶時期に秦野のお茶を使った『お茶糖豆』などを季節の商品として開発したり、実際にさくら豆の製造を体験できる『さくら豆講習会』を開いたりしています」と杉山さん。さらに今、店舗に併設する喫茶スペースを準備中。地域のコミュニティづくりの一端を担いながら、元気な秦野をつくっていきたいと考えています。
(有)かまか商店
〒257-0031 神奈川県秦野市曽屋1-5-15
TEL 0463-81-0006
営業時間 9:00~19:00
定休日 月曜日 ※祝日の場合は翌平日