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神奈川大学の学生が、キラリと光る「おいしい」を求めて県内各地へ出かけ、地産地消への思いなど、「おいしい」をテーマにレポートします。今回は学生が記者になって、港町のイメージが強い横須賀市で「よこすか野菜」をテーマに探検します。温暖で自然豊かな環境と、相模湾と東京湾に囲まれ、潮風が心地よく吹く丘の上で、野菜と人に真摯に向き合う地元出身の「農家」の活躍に迫りました。
神奈川県を代表する特産野菜といえば、「鎌倉野菜」や「三浦野菜」を思い浮かべる人が多いかもしれません。「よこすか野菜」とは、キャベツや大根、カボチャといった身近な野菜から、イタリア料理やフランス料理で使われる色鮮やかで珍しい西洋野菜まで、年間を通じて様々な種類の野菜が栽培されています。このように横須賀市内で生産される高品質な野菜を、「よこすか野菜」としてJAよこすか葉山が市と協力して積極的にPRしています。
◆休日の朝から大盛況『すかなごっそ』の賑わい
「おいしいかながわ探検隊」が最初に訪れたのは、JAよこすか葉山直営の農産物直売所『すかなごっそ』です。ここでは朝採れの新鮮な野菜が大人気で、日曜の朝10時にも関わらず、駐車場は多くの車で埋まり店内は大盛況でした。そのため、店内の野菜が少なくなると追加搬入も行われるそうで、取材中にも農家の方が野菜を届けに来ていました。店内には、大小さまざまでカラフルな野菜が並び、それぞれに生産農園のシールが貼られています。その中でもひときわ目立っていたのが、金色の縁取りが特徴的な「鈴也ファーム」の野菜でした。そこで、次はその「鈴也ファーム」について取材を行いました。
◆色鮮やか「レインボー野菜」
鈴木さんが手がける「鈴也ファーム」の特徴は、なんといっても色鮮やかな「レインボー野菜」です。すかなごっそ市場でも一際目を引くカラフルな根菜たちは、海外視察や多くの人々からの知見をもとに育てられ、その種に秘密があると言います。実際、私も鈴木さんの大根を購入しましたが、その鮮やかさに驚き、思わずSNSに投稿したくなるほどでした。
レインボー野菜は見た目の美しさだけでなく、子どもが苦手な野菜を克服する助けにもなっています。例えば、オレンジ色ではないニンジンなら、ニンジン嫌いの子どもでも食べられることが多いとされ、子育て世代からも支持を得ているそうです。
鈴木さんは、現在5代目の農家ですが、もともと農業を志していたわけではなく、キャリアの始まりは外車ディーラーの仕事でした。車の販売を通じて様々な経営者と出会う中で、彼らが鈴木さんの実家の農業に興味を持つ姿に触れ、「農家」を見直すきっかけを得ました。そうした中で、農家は自分たちで野菜を作る「メーカー」でありながら、自分たちで売ることもできる「販売店」という農業の魅力に気がつきました。
農業の世界は「3K」(汚い、カッコ悪い、稼げない)というネガティブなイメージがあり、鈴木さんも幼少期から親に「無理に継がなくていい」と言われて育ちました。しかし、その考えに疑問を感じ続け、3年半勤めた会社を辞めて農家としての道を歩むことを決意したのです。
そんな鈴木さんですが、ここに至るまでには数々の試練がありました。農業を始めた当初、周囲からは本当に大丈夫なのかと半信半疑で見られながらも、絶対にいけるという確信のもとで根気よく続けていました。それでも、地域との関わりを大切にしながら信頼を築き、様々な挑戦を続けてきました。
◆名づけ親は進次郎さん
「鈴也ファーム」という名前は、小泉進次郎さんが名付けたそうで、進次郎さんが農林部会長を務めていた際によく横須賀市に訪れていたことで親交が生まれました。鈴木さんが農園の名前について相談をしたところ、「鈴木ファーム」・「鈴木農園」では埋もれてしまうとのことで、「鈴木優也」さんの最初の文字と最後の文字を組み合わせて「鈴也ファーム」という名前を提案されたのがきっかけでした。
これからの展望について伺うと、鈴木さんは「お客様が野菜を食べられる場所や、おいしいと言ってもらえる環境を作りたい」と話してくれました。現在の野菜作りを基盤に、より多くの人々に届ける方法を模索しているようです。例えば、「おいしい」や「笑顔」を届けるために、人と人を繋げたり、他業種とコラボレーションしたり、農業と何かを組み合わせた新しい取り組みにも積極的です。
◆さいごに
明るく未来志向で「野菜作り」を語ってくださった鈴木さんのバイタリティーに圧倒されっぱなしの取材活動となりました。普段何気なく食べている野菜が、生産者の方と接しコミュニケーションをとることで、「我がごと」として身近なものになりました。
テレビや雑誌、街歩きなどで「野菜」が目に入ってくるたびに、今回の探検が思い出され、調べてみよう!学んでみよう!という気持ちが出てくるようになりました。野菜や畜産など生産現場を訪れることで、好奇心が多方向に広がったことを実感しています。生産現場の探検、読者のみなさんにオススメします!
(おいしいかながわ探検隊 神奈川大4年 坂部尚樹 2024.11.20)
<サイド・坂下記事>
[番外編] 野菜が繋ぐ人との縁 ~「すかなごっそ」店長は神大OB~
夏野菜が並ぶ最盛期には5千人を超え入場制限がかかることもあるという「すかなごっそ」。我々が取材にお邪魔したこの日は農業の「端境期(はざかいき)=農作物が収穫されて市場に出回る直前の品薄な時期」…。とはいっても、
色とりどりの野菜やしぼりたてミルクを使ったソフトクリーム販売など、工夫が凝らされた売り場は〝農畜産物のテーマパーク〟として訪れる人たちを幸せな気分にしてくれます。
生産者の思いと消費者をつなぐ、店舗を運営されているのはどんな人なんだろう-。
この日の取材にご協力いただいた「すかなごっそ」店長の髙橋祐太郎さん、なんと神奈川大学の卒業生でした!
食が繋いでくれたご縁、日々の食に感謝、を改めて感じた今回の「探検」でした。
先輩、ソフトクリームごちそうさまでした!
(おいしいかながわ探検隊 神奈川大1年 坂下雅楽 2024.11.20)