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神奈川大学の体験型研修として開講しているプログラム「食育わくわく体験」の

3回目、梅収穫&スモモジャム、梅干しづくり体験を
615日(土)、小田原市梅の里センター(同市曽我別所)を拠点に行いました。

「食育わくわく体験」は、5月11日(土)に二宮町で約1tの玉ねぎ収穫、5月25日(土)漁港の駅「TOTOCO小田原」(アジフライと二宮町で収穫した玉ねぎを使った味噌汁づくり、地元の方と耕作放棄地となっているみかん畑での夏みかん収穫) に続き、今回(3回目)。最後の体験研修でした。

今回の拠点となった

小田原市の曽我エリアは、別所梅林での梅まつりをはじめ、梅と塩だけで作る梅干しなど、有名な梅の産地です。

化学生命学部の中川理絵先生、小田原市教育委員、NPO法人こころみ代表の益田麻衣子さん引率のもと、参加した19名の学生たちは初めての梅収穫に苦戦しつつも、過去2回の実習で学部や学年の違いの垣根を超えた関係が出来上がっており、グループワークでは役割を分担しながら終始笑顔の絶えない実習となりました。

■ジョイファーム小田原さんが所有する梅畑へ

 今回、学生に収穫から調理までご指導頂いたのは小田原エリアで梅畑を20か所以上運営している(有)ジョイファーム小田原(同市曽我岸531 以下:ジョイファーム)さん。

 ジョイファームは農産物や農産加工品を販売している会社で“安心安全なものを皆さんに食べて欲しい”という理念のもと約130名の生産者が集まって構成されているアグリピープル集団。

先ず、代表取締役の鳥居 啓宣(ひろのぶ)さんからご挨拶を頂き、スタッフの方が運転する車に分乗して、いざ梅畑へ!

 

 

スタッフを紹介する鳥居社長(右端)

 

 

道中、二十か所を超える畑をそれぞれどうやって識別しているのかお伺いしたところ、「それぞれの畑にその地名を付けて管理している」とのこと。

車に揺られること約20分、この日収穫を行う「(中井町の)関山」に到着し、梅畑に入っていきます。

 

■選別しながらの作業と斜面に苦戦

 収穫作業に入る前に、梅の識別についてレクチャーがありました。

 梅の実にはパッと見ではわからない小さな穴と黒ずみがあるものがあり、それは「アカマ

ダラケシキスイ」が産み付けた卵からかえった幼虫が入っているそう。それは廃棄処分

せざるを得ないため白色のバケツに入れるように指示されましたが、初めての人にはなか

なか見分けるのが難しく、慣れるまで選別ひとつにも時間がかかっていました。

 

 

 

中央上部の黒ずみに赤マダラケシキスイの幼虫が入っています

 

 

アカマダラケシキスイの成虫

 

 

また、「関山」の梅畑は急な斜面のため、敷き詰められているネットに足を取られないように気を使いながらの作業でした。木から落ちた梅の多くは斜面を転がり下の方にたまっているため、梅で重くなったカゴを移動させながらの作業に苦戦しましたが、2時間弱で約320Kgの梅を収穫することができました。

 

 

 

 

 

写真を撮るときは楽しそうな作業中の学生たち

 

 

 

収穫を終え、富士山をバックに記念撮影

 

 

■午後からは梅干し、スモモジャムづくり

 収穫作業後は梅の里センターに戻り、昼食休憩をはさんでスモモジャムと梅干しづ

くり。ここからはジョイファームの大須真希さんが学生にレクチャーを行います。

 

 

スモモジャムと梅干し作りをレクチャーしてくださった大須さん

 

 

スモモジャム作りの工程は、①スモモを半分にカットして種を取り出し、②1.2Kgのスモモに対し600gの砂糖を投入。③実をつぶしながらかき混ぜ、じっくり火にかけ煮込んでいきます。

 煮込んでいる時間を使って、並行して梅干し作りに取りかかります。

 「腐らない梅干し」として添加物(保存料)を使用せずに沖縄産の天然塩のみを約18%の塩分濃度で製造する「曽我の梅干し」の製法を伝授された学生たちは❶竹串で「なり口」を取ってから❷水分をふき取り❸梅干し20粒が入った保存バックに慎重に18%分の塩を入れていき、梅にまんべんなく塩が馴染むように整えます。この後の工程は持ち帰ってからの作業になるため梅干し作りはここまで。

休む間なくスモモジャム作りに戻ります。

 ④煮詰まってきた鍋の泡を取り除きながらスモモがトロトロになるまで煮込んで完成。

 ⑤まだ、熱々のスモモジャムを1個ずつ瓶詰めして調理道具を洗ったところで本日のスモモジャムと梅干しづくりは終了となりました。

 

 

①意外に難しかったカット作業

 

 

砂糖を投入
実をつぶしながらかき混ぜます
なり口取り
水分を拭き取り
塩をまんべんなくまぶす
④トロトロになるまで煮込む
⑤瓶詰めして完成

■食べる人の体の一部になるものだから体への影響を考える

 一連の作業が終了し、最後に鳥居社長による講話が行われました。

 小田原では昭和30年代に需要の高かったみかんを次々と植樹しましたが、昭和40年代半ばに起きた生産過剰による販売価格の大暴落により、農家が大きなダメージを受けました。その時、鳥居社長は収穫量を増やすのはなく、そこにいる生き物との共存が重要と気付いたそうです。それからは、自然に近い環で栽培を行うことを前提に、人と人をつなぎ、地域農業を活性化させながら農業の可能性を追い続ける先陣を切る存在になることを目指しているそうです。

 具体的には

1.農薬散布は2回まで(0回にできるものは0回で)

2.肥料は有機質肥料のみを使用

3.除草剤は使用しない

を実践しているそうです。

「畑は自分の体と同じ。薬を使うことで畑にいる生き物を殺してしまう。自分の体に置き換えると、体に薬(毒)が入ってくることで体内に影響が出るということ。便利さを求めることで大切なものを失っている。そして畑が取り込んだ毒は吐き出さないと次の世代に残ってしまうことを考えて欲しい。」と学生に訴えました。

 

 

講話する鳥居社長

 

 

最後に感想を求められた学生は

 「農業を自分事として考えられるようになった」(工学部 三村 優菜さん)

 「今まで単純に生産量が減っているとか値段が高騰しているとかの事実に対する消費者目線だけだったのが経緯や理由があってのことと理解できた」(法学部 吉倉 雪乃さん)

 「獣害は獣が引き起こす直接的な被害だけではなく、そこから害虫を連れてくることで別の影響があることを知った」(理学部 川西 結実子さん)

 「みんなで作業すると農業が楽しく感じる」(経済学部 一場 奏輝さん)

 と話していました。

 

 小田原エリアで3回の実習を終え、今後は振り返りを経て7月6日の報告発表会で「体験型研修~食育わくわく体験~」のフィナーレを迎えます。(vol.2へ続く)

 

 

 

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