知る人ぞ知る神奈川県の名産品をたどる「おいしいかながわ探検隊」。今回は学生が記者になって「湘南のリゾート地」のイメージが強い葉山町で「わかめ」をテーマに探検します。
日本の渚・百選にも選出される海岸線をはじめとした「環境」と、葉山牛や夏みかん、しらすなどの、海陸問わない「食」にあふれた町で、海に向き合う地元出身の「女性漁師」の活躍に迫りました。
■葉山地区のおいしいが集まる―真名瀬漁港
葉山にある有数のスポットの一つでもある「真名瀬漁港」に、「おはようございます!」と溌剌(はつらつ)とした声で私たちを出迎えてくれたのは、漁師の長久保 晶さん。
早速、漁港内に案内していただくと、彼女が船長を務める「桜花丸」にはたくさんの採れたての生ワカメが積まれていました。
「春はわかめ・ひじき・天草などの海藻」を採っているほか、タコ漁も行っているという。取材日はまさに、「ワカメ漁の日」で取材班は作業の一部を体験させていただきました。
次に「お湯で湯掻き」「水洗い」をします。これは、海水の塩分を適度に落とすほか、付着している微細な不純物などを落とすことができます。褐色がかっていたわかめは、高温のお湯に入れると一瞬で鮮やかな緑色に変化していきます。
最後に「干す」作業を行いました。吊るしてある洗濯バサミにわかめの根本を少しはさみ、爪で根本を縦に半分に裂いてもう半分を隣の洗濯バサミにはさんでいきます。茎の部分は一番乾きにくいため、割いて乾燥しやすくしているのだそうです。なるべく風が通るようにしたら一晩干して翌朝取り込みます。さらにもう一晩除湿をかけた部屋に置き、汚い部分を一本ずつ選別し「袋詰め」をします。その工程は、まるで洗濯物のようだと思いました。
最初の「切る」作業を行っていると、男性漁師の方や、料理研究家の方がお手伝いにやってきました。さらには、「干し」の作業前には近隣の福祉施設からボランティアの方々が
やってきました。長久保さんを慕う「チーム桜花丸」です。
作業後には茹でたての「めかぶ」をいただきました。茹でたては味付けしていなくても、塩味が効いていて絶品でした。途中で長久保さんオススメのマヨネーズをかけてもらったところ、塩味が中和されてマイルドな味わいに。作業後の「めかぶ」は、今まで食べた中で一番おいしかったです。
■漁師減少の対策として取り組む「水福連携」
発端は昨年の春、藤沢市を拠点に活動を行っている認定NPO法人藤沢市民活動推進機構の堀さんから、話を受けたのがきっかけです。
福祉の支援を要する方を、ボランティアとして受け入れるにあたっては配慮すべきこともあるため、「受け入れない」選択をする事業者も少なくない中、手を挙げてくださったのが長久保さんでした。
今回のような作業の一部や、なかなか外での活動が難しい方のためには、ワカメの袋詰めなどといった内職作業も手伝ってもらっているそうです。
昨今、漁師は減少傾向にあるので跡継ぎがいないことや、外から漁師になりたいと思う人がいても、地元の漁業組合の了承を得なければ漁に出ることができないといったコミュニティへの参入が高いハードルとなっているのが現状です。
人手不足が課題の中、長久保さんはボランティアの方々を受け入れたことで、漁に出る時間がこれまでより長く確保できるようになりました。
「水福連携」を通じて、良い相互作用が生まれているのです。
■海水温上昇による海環境問題について
この日揚げられたワカメはおよそ100~120kg。バケツにはたくさんの「ワカメ」があるように思いましたが、近年は「海藻類の育ちがあまりよくない」と長久保さんは言います。
「海水温の上昇が起因していると思っています。ワカメはとても繊細なので、海水温がたった1℃違うだけで全然育たないんです。種をつけても発芽しなかったり、発芽しても魚の食害にあってしまっているのが現状です」。実際に、昨年と比較しても収穫量は減っているそうです。「海藻」と聞くと、いつでも採れるイメージでした。
直接的に「漁業」に関連しないことでも、積極的に取り組んでいます。その一つとして現在行っている「山を整える」活動です。
「まだ始めたてなんですけどね・・・」と笑いながらも、「ワカメが育ちにくくなっている原因は海水温上昇が起因していると考えていますが、その他にも原因があるのではないかと思っています。そのため、ワカメに必要不可欠なミネラルを多く含ませるために、山からの栄養分を海に流せるような道づくりをしてみようと思っています」と考えました。
「海は多くを語らない」だからこそ、地道に様々なルートで解決策を模索しています。