「産学連携プロジェクト」は、県内の食の事業者が抱える課題を学生と事業者が一緒になって解決に取り組むプロジェクトです。
8月に始まったこのプロジェクトは、神奈川大学経営学部中見ゼミの学生たちが事業者から課題を聞き出すことから始まり、新商品の開発や新しいビジネスモデルの採用など、学生らしい視点からさまざまな解決方法が提案されました。
3カ月にわたる取り組みを紹介します。
開発した新商品をイベントで販売
伝統のわらび餅に新しい味を加える
大学生と縁がある「大学芋風味」を提案
大谷堂チームは、若い人が食べたくなる新しい味のわらび餅の開発に取り組みました。いくつもの新しい味を提案し、試作と試食を重ねた結果、採用されたのは「大学芋風味」でした。
学生たちは、「秋の百貨店の催事に向けた商品なので、季節感を大切にしている大谷堂さんに大学芋風味が採用されたのだと思っています。大学芋には、大学生とのコラボという意味もあります。また、さつまいもには孝行芋という別名もあり、大谷堂さんがお客さまに孝行するという意味も込めました」とネーミングに込めた思いを説明します。
チームは新味の提案だけでなく、商品名の提案やパッケージやポップのデザインの提案なども行いました。
百貨店の催事場で販売
プロジェクトで開発された新商品は、10月に行われた百貨店の催事で実際に販売されました。
「わらび餅を若い世代にも食べて欲しいという思いから、SNSによる情報発信や、新商品の開発には以前から興味がありました」と話す川崎大師 大谷堂 営業 梶原裕二さんは「プロジェクトではわらび餅の可能性を感じさせるさまざまな新しい味が提案され、時間が許せばそのすべてを試作してみたかったですね」とプロジェクトを振り返ります。
また、「ネーミングやデザインなども細部まで考え抜かれていて、感心しました。商品化後に実際に催事で販売した際は、安定した売れ行きを見せ、お客さまの関心も高かったことが印象的でした。新しい商品を作るという今回のプロジェクトへの参加は当社の社員にも良い経験となりました」と今回のプロジェクトを高く評価しています。
学んだことを実践する難しさ
商品企画から実際の販売までを経験できた今回のプロジェクトは学生たちとって貴重な機会になりました。
駅から売り場までの道順を説明する動画を作成するなど、顧客視点で考える商品開発の体験は、今後の活動に生かされていくことでしょう。
「授業や参考書で学んだこと生かす機会だったのですが、実際にやろうとすると一筋縄ではいかないことを実感しました」と振り返る学生たちはスケジュール管理の難しさを反省点として挙げています。「出したアイデアは事業者に確認してもらう必要があります。ロゴを使いたいと思っても、申請や承認まで時間がかかります」と催事までの限られた時間の中でプロジェクトを進める難しさを強調していました。
川崎大師の仲見世通りで、昔ながらの製法を大切にして時間をかけて作っている「わらび餅」を扱う大谷堂は原材料にも拘り、山梨の畑でわらびの栽培も行っています。新しい味をカタチにできた梶原さんは「また機会があれば一緒にチャレンジしたい」と振り返っていました。